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最高裁判所第一小法廷 昭和52年(し)114号 決定

主文

本件抗告を棄却する。

理由

申立人の抗告趣意のうち、憲法違反、判例違反をいう点は、申立人が所論押収物の所有者として、その還付を受ける正当な権限があることを前提とする主張であるところ、原決定は、申立人に右のような権限があるとは認め難いとしているのであるから、所論は、原決定の認定にそわない事実関係を前提とする主張であり、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも適法な抗告理由にあたらない。

なお、申立人が還付を請求する所論の押収物は検察官の歳入編入処分によりいずれも国の一般財産と混和し特定性を失つたから還付が不能であるとした原判断は、相当である。

よつて、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(藤崎萬里 団藤重光 本山亨 戸田弘 中村治朗)

〈参照・原決定〉――――――――――

東京地方検察庁検察官が、押収物たる別紙目録(一)(二)記載の金員についてなした歳入編入処分に対し、これが押収物の還付に関する処分にあたるとして、右申立人代理人弁護士松田武から、準抗告の申立があつたので、当裁判所はつぎのとおり決定する。

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

第一 本件申立の趣旨及び理由

本件申立の趣旨は、

「東京地方検察庁検察官が、昭和五一年一二月二七日、別紙目録(一)記載の金員についてなした歳入編入処分及び昭和五二年三月一一日、別紙目録(二)記載の金員についてなした歳入編入処分をいずれも取り消す。

右金員合計一億九、〇四〇万六、八〇六円を申立人に還付する。」旨の決定を求める

というのであり、その理由は、要するに、「右金員は、いずれもY、Oらに対する外国為替及び外国貿易管理法違反等被疑事件に関して押収された現金又は小切手換価代金であるところ、申立人の経営するアメリカ合衆国ラスベガス所在の賭博場(カジノ)で賭博をした日本人客が、賭金を現金で支払うことなく、いわゆる「ツケ」として申立人から借りた勘定として帰国し、日本国内でその債務を申立人の代理人に対して弁済したもので、既に事件も起訴、一審判決と進行して当該金員に対する留置の必要はなくなつているものであるところ、右一審判決には、かかる賭金に当てる金銭の貸借契約が日本においても有効であるとの判断を示したものがあり、この金員が申立人の所有に属することは明らかであるのに、東京地方検察庁検察官は、申立人が、書面により、あるいは代理人を通じて、再三申立人に対する還付を求めたにもかかわらず、右申立人の所有権を否認してこれを拒み、被押収者の還付請求権放棄の手続を経て(この手続は申立人の右金員に対する所有権の主張に影響するものではない)、同年一二月二七日、別紙目録(一)記載の金員につき、昭和五二年三月一一日、同目録(二)記載の金員につき、いずれも歳入編入処分を行つた。右歳入編入処分は不適法であり、申立人は右各金員の所有者として、これが還付を求める正当な資格を有しているので、申立の趣旨どおりの裁判を求める」というのである。

第二 検討

一 事案の概要

当裁判所は、申立人代理人及び検察官の双方から意見を徴するとともに、右各当事者から提出された資料(本件記録に編綴)並びに本件押収金員等に関連する当庁昭和五一年特(わ)第二二六号Yに対する外国為替及び外国貿易管理法違反被告事件及び同昭和五〇年刑(わ)第二五六九号他Oほか二名に対する恐喝未遂等被告事件の各訴訟記録を精査した。

その結果、次の各事実が明らかである。

(一) 申立人は、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市でシーザースパレスホテル及び同ホテル内に設けられた賭博場(カジノ)を経営している株式会社であるが、「ラスベガス・カジノツアー」と銘打つて、右カジノで賭博をする日本人客を同ホテルに無料招待する旅行を企画し、昭和四八年九月以降数次に亘り、申立人代表者と交際のあつたOらの日本人を主催者としてこれを実施した。

(二) 同社は、右ツアーに参加した日本人客で賭金に不足した者に対し一定限度内で希望する額を貸し付け、その弁済を帰国後日本国内で右主催者らに対してすることを認めており、右Oらは、これらの客からの右貸付金の集金に当つてきたが、わが国の為替管理制度上、集金しても同社への送金ができず、日本国内での運用を考えなければならなかつたことなどから、申立人はこれを弁護士Yに保管させることとし、昭和四九年六月から、Oは集金した金員を右Yの許に持参するようになつた。

(三) こうするうちに、右集金等の事実が発覚し、昭和五〇年の夏、O、Yらは外国為替及び外国貿易管理法違反の罪で検挙されるに至り、Yは右のようにOから受領した金員(小切手を含む。以下同じ)及び自らカジノツアーの客から右貸付金の弁済として受領した金員を預金してあつたが、これを最終的には銀行預金小切手(別紙目録(一)1の小切手五通)として検察官に対して任意提出し、Oは集金してまだYに引き渡していなかつた金員を二人の者に預けてあつたところ、うち一人がこれを銀行預金小切手(同目録(二)の小切手二通)として任意提出し、他の一人はその預かつていた金員の預金証書を任意提出し、以上のようにしてこれら小切手及び預金証書はいずれも領置された。右のうち預金証書はその後還付され、預金が解約されて、払い戻された金員(同目録(一)4の現金)をOが任意提出した。また、昭和五〇年三月ころから、Oの依頼を受けたKが本件集金に当つていたが、同人は集金し預金していた金員を銀行預金小切手(同目録(一)2の小切手一四通)とし、集金した旅行小切手(同目録(一)3の旅行小切手一五通)と共に任意提出し、これらはいずれも領置された。

(四) 東京地方検察庁検察官は、昭和五一年初めころ、別紙目録(一)1の小切手五通についてY、Oの両名から、同目録(一)2の小切手一四通及び同目録(一)3の旅行小切手一五通についてO、Kの両名から、同目録(二)の小切手二通についてOほか一名から、それぞれこれらに化体された金員をも含めてその所有権を放棄する旨の書面の提出を得、さらに同年一一月ころ、同目録(一)4の現金についてもOから所有権放棄書が提出された。

(五) その間、Y、Oほか二名の者が外国為替及び外国貿易管理法違反等の罪で東京地方裁判所に起訴され、いずれも有罪判決の言渡を受けた(Oほか一名は控訴中である)が、この過程で右各小切手、旅行小切手、預金証書は裁判所で領置されたこともなく、またこれらの物件につき没収の言渡もなかつた。他方、東京地方検察庁検察官は、昭和五一年三月四日、これらの物件につき、刑事訴訟法四九九条にもとづいて公告を行なつた。申立人は、昭和五一年三月一二日、書面により右小切手、旅行小切手及び証書の還付を求める申入れをしたが、東京地方検察庁検察官は、同年四月一四日、書面の回答でこれを拒否し、さらにその後右還付公告の存在を知つた申立人から、代理人を通じて口頭で、あるいは書面で再度還付を求められたのに対しても、同年一〇月二七日、再び書面により、申立人には還付を受けるべき正当な資格がないとしてこれを拒んだ。

(六) 東京地方検察庁検察官は、右公告がなされてのち六か月を経過しても還付を受けるべき者からの請求がなく、また、前記各所有権放棄がなされたことによつて、本件各物件はいずれも国庫に帰属したとして、同年一二月二七日、別紙目録(一)記載の小切手及び旅行小切手の換価代金並びに同目録(一)4の現金を、証拠品事務規程に従つて歳入に編入する処分を行い、さらに、昭和五二年三月一一日、同目録(二)掲記の小切手の換価代金をも同様歳入に編入する処分を行つた。

二 歳入編入処分と本件申立の適否

ところで、歳入編入処分は、押収された金員や押収物の換価代金で国庫に帰属したものにつき、検察官の命令で、これを国の一般収入に含ましめる処分であり、これによりこれらの金員の押収物たる地位を失わせる効果をもたらす点では還付処分と相通じ、還付をしないとの意思が表明されているという点では還付拒否の処分とも相通ずるところがある。しかしながらこの歳入編入処分がなされると、その対象となつた金員は、国の一般財産と混和し、特定物としての存在を失うことになると解せられ、その後にこの処分を取り消したところでいつたん他の一般財産と混和した金員の特定性はもはや回復するわけではない。そうすると、元来押収物の還付は特定物についてのみ可能なのであるから(破壊、廃棄によつて存在を失つた物と同様)歳入編入処分の対象となつた金員は、その特定性を失うことにより還付を求めることができなくなつたものと解せざるをえない。以上により、歳入編入処分はそもそも刑事訴訟法四三〇条一項の「押収物の還付に関する処分」にあたらないと解すべく、同編入処分は、仮に申立人が国に対し不当利得返還請求訴訟等を提起する場合において、その効力が問題となることがあるにとどまると解するのが相当である。

そうすれば、本件各歳入編入処分の取消を求める申立は不適法であり、結局、申立手続が規定に違反したものといわなければならない。

三 本件押収物金員等の所有権の帰属について

なお、本件については、申立人が、かねて、押収された別紙目録記載の現金ないし小切手はいずれも申立人の所有に属すると主張し、この点を根拠として検察官に対し還付の請求をしており、検察官が右主張を認めず還付を拒否し、ひいて本件歳入編入処分に至つたという経緯があるので、同押収金員等の所有権が申立人に属すると認めうるか否かにつき念の為以下に検討する。先ず、押収物の還付手続は、本来、私法上の権利関係を確定し、あるいはこれに変動を生ぜしめるためのものではなく、押収物につき原状回復を図る措置に過ぎないから、被押収者とは別に、所有権を主張する者に対して還付がなされるのは、その所有権の帰属が、当該押収物にかかる刑事手続において明白である場合に限られると解すべきである(刑事訴訟法一二四条、三四七条一項、四項参照)。したがつて、押収物の所有者であることが明白でない者には、刑事訴訟法上の押収物還付請求権はなく、その者は民事訴訟手続においてその権利を主張する他ないと解するのが相当であるから、以下、申立人が本件押収金員等の所有者であることが明白に認められるか否かについて判断することとする。

(一) 前記のとおり、O、K、Yの三名は、申立人の委託により、本件貸付金の集金をし、あるいは集金した金員を引き継いで、いずれも申立人のためにこれを保管していたところ、前記の経緯で押収されるに至つたものである。ところで、債権取立委任契約に基づき受任者の取り立てた金員の所有権がただちに委任者に帰属するか、あるいは、いつたん受任者に帰属するかについては、結局、個々の契約内容を具体的に検討して定める他なく、ことに右契約において右金員が受任者の自由処分を許さない趣旨のものとされているかどうかを種々の証拠に照らして判定しなければならない(最高裁判所昭和二九年一一月五日判決刑事判例集八巻一一号一六七五頁はこの点につき金銭の所有権は通常金銭の占有と共に移転すると判示し、本件のような場合、特段の事情のない限り、その所有権は受任者に帰属すると解しているかの如くであるが、当裁判所はこのように一般的な立言をするものではない。)。

そこで、以下、申立人とO、Yらとの間の関係、その間の本件貸付金取立委任や金銭寄託保管に関する契約内容について、ことに金銭の扱いに関する当事者の意思を推認させる諸種の情況証拠に焦点をあてつつ検討する。

(二) まず、申立人とOの関係について。Oの検察官に対する昭和五〇年七月八日付、一〇月二二日付、同月三一日付(二通)、司法警察員に対する同年六月二一日付各供述調書、Pの検察官に対する同年七月四日付供述調書に関係証拠を総合すれば、次の事実が認められる。

(1) Oは、かねて、申立人代表者と親交があつたところから、昭和四九年三月ころ、月二、〇〇〇ドル(のちに三、〇〇〇ドル)の報酬の約束で前記ラスベガス・カジノツアーの主催者の役を引き受けたものであり、客を募つてツアーを実施するほか、前記のとおり、申立人から賭金として貸付を受けながら未払いのまま帰国した客たちから、右貸付金の集金を行なつていた。そのうえOは、申立人の関連会社等設立の話がもち上がつたとき(後述(三)の(2)(3))その代表者に推されており、本件集金のため人を雇つた際、自ら申立人の関連会社であるフアー・イースト・エンタープライズの日本代表名で契約書に署名したりしていた。

(2) Oは、本件貸付金の弁済として受領した現金や小切手を自己名義や架空名義を含む数個の他人名義の銀行預金の口座に預け入れるなどして保管する一方、その中から、カジノツアーの航空運賃等の経費を支払つたほか、右集金した金員の一部を集金のために雇つた者たちへの報酬、申立人代表者の日本滞在費用、申立人との国際電話の料金などに充て、さらにフランク・シナトラ歓迎パーテイに要した費用などに支出したこともあつた。

(3) Oは、右のとおり預金をし、申立人に対して預金証書の写しを送付するなどして集金先や預金高を報告していた。ところが、集金した金員を預け入れた口座のうちO名義の口座には、O個人の預金もなされており、集金された金員の一部は他の金員と混和して特定性を失つているとみるべき状態にあつたし、また同人は、集金してきた現金で、申立人とは無関係の小切手を換金したり、その一部を流用したりしたこともあつた。

以上の事実に照らすと、Oは、申立人のために諸種の活動をし、集金した金員をその活動のために、さらには私用にもかなり自由に使用処分していたことがうかがわれる。そして(3)のような報告がなされていたことなどからみて、Oの右のような金員の扱い方を申立人が知りうる機会は十分にあつたと思われるのに、申立人がOに対してこの点で非難をし、あるいは金員扱い方法について改善方を指示した形跡はない。また、Oは、右のように集金しかつ支出した残余の金員を前記のとおりYの許に持参していたのであるが、O自身「Yには、集金した金員の原物を引き渡す必要はなく、要は金額さえ間違わなければそれでよいと思つていた。」旨供述している(同人の検察官に対する同年一二月二〇日付供述調書)。以上の諸点によれば、Oと申立人との間の本件金員に関する委託契約につき、Oが集金した金員自体を自由に使用処分することを許さず同人は同金員につきそのまま特定物として保管する義務を負うという類の内容を推認することにはかなりの疑いがあり、したがつて、右金員は集金の時点以降において申立人の所有に帰したものと解し、前記一(三)の押収時Oが保管していた別紙目録(一)4及び同目録(二)の小切手や現金は、いずれも明らかに申立人の所有物であるとまで認めることは困難というべきである。

また、前記Kは、Oに雇われて本件集金に当つたに過ぎないものと認められ(当庁昭和五〇年刑(わ)第二五六九号Oほか二名に対する恐喝未遂被告事件第一七回公判調書中の証人Kの供述部分)、前記一(三)のとおりKが押収時所持していた別紙目録(一)2、3の各金員(小切手)は、いわばOの手足として、これを特定物として保管していたものというべきであるから、以上Oについて述べた理由とあわせ考えればこれらの金員もまた明らかに申立人の所有物であるとまで認めることは困難な筋合いとなる。

(三) つぎに、申立人とYの関係について。Yの検察官に対する昭和五〇年一一月一八日付、同月二二日付、同月二七日、同年一二月二日付(二通)、昭和五一年一月二八日付各供述調書、同人に対する当庁昭和五一年特(わ)第二二六号外国為替及び外国貿易管理法違反被告事件第四回公判調書中の同人の供述部分、司法警察員作成の昭和五〇年一一月五日付「通信文捜査報告書」その他関係証拠を総合すれば、次の各事実が明らかである。

(1) Yは、共同で東京に法律事務所を開いているアメリカ合衆国の弁護士ジョージ・ヤマオカが、申立人との間でとり決めたところに従い、Oが集金してきた金員を保管することになつたもので、昭和四九年六月、東京銀行新橋支店に「トラスト・アカウント・オブ・ヤマオカ・アンド・ヨシモト・ロー・オフイス代表者Y」名義で普通預金口座を開設し、自ら受領した金員及びOが持参した現金、小切手等申立人の関係で入金したものをすべてその他の関係の金銭と区別してこの口座に預金したうえ、これを逐一申立人に報告していた。申立人は監査人を派遣して右口座の預金高を確認したこともあり、Yは申立人の指示や了解なしにはこの口座の金員を使用、処分したことはなかつた。

(2) しかしながら、前記のとおり、我国の為替管理制度上、本件金員を申立人の許へそのままの形で送ることが不可能と考えられたから、申立人はこれをYの保管に委ねたのであり、Yの助言を得ながら右金員を日本国内に投資して運用する新会社あるいは申立人の関連会社の支社を日本に設立する話を進めていたが、そのころには、YをOと共に右新会社等の取締役に就任させる案も考えられていた。また、申立人は前記ヤマオカを通じてYに対し、右のような会社設立等の最終処置に至るまで右の資金を前記預金口座に寝かせておきたくない意向を表明して、株の購入等の一時的運用の可否の検討を求めたこともあつた。

(3) その後申立人の関連会社の支社を日本に設ける話が具体化し、Yは、昭和四九年秋ころ、関係機関に所定の書類を提出するなどしてその手続を進めたのであるが、その途中で申立人の意向によりこの案が取り止めになつたところから、Yは、自分が本件金員を保管しておく理由がなくなつたとして、申立人との間で右金員の寄託契約を解除した。

(4) Y自身、捜査のごく初めの段階を除き、自己の公判が終るまで一貫して、同人と申立人との本件金員にかかる契約関係を消費寄託である(したがつて本件金員自体は自ら消費できる)旨の供述を続けていた。

右(2)、(3)の事実によれば、Yは、Oの持参する金員等を受理保管しはじめたころの事情はともかくとして、本件金員を日本国内で投資運用するための会社(支社)設立の話が進むようになつてからは、結局はその設立手続等申立人のため右資金の効果的な運用のために右金員を保管していたものであること、同人が新しく設立される会社や支社の役員として右金員の運用に当る者と考えられていたことなどがうかがわれるのであり、これに(4)のような弁護士たるY自身の本件寄託関係に関する感覚を考え合わせると、(1)の金員保管情況に関する事実はあるにしても、なお、申立人とYとの間の本件金員の委託契約関係につき、Yが入手した金員自体を自由に使用処分することを許さず同人は同金員につきそのまま特定物として保管する義務を負うとするような内容を推認するにはかなりの疑いがあり、したがつて、右金員につきY入手の時点以降において申立人の所有に帰したものと解し、前記一(三)の押収時Yが保管していた別紙目録(一)1の小切手が明らかに申立人の所有物であるとまで認めることは困難である。

(四) してみると、本件に現われた全証拠を以てしても、別紙目録(一)(二)の金員が明らかに申立人の所有に属するとまで認めることは困難であり、したがつて、本件賭金の消費貸借ないし右金員の取立委任等の契約自体が公序良俗に反するかどうかについて判断するまでもなく、本件申立人につきこれらの現金、小切手に対する還付請求権を肯定することはできない。

第三 結論

以上の理由により、本件申立の手続は規定に違反し、なお、申立人は還付請求権を有する者とも認められないので、結局、本件申立は排斥を免れないところである。よつて、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項に則り、主文のとおり決定する。

(岡田光了 永山忠彦 木口信之)

別紙目録(一)、(二)〈省略〉

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